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冬期の性能水準の提案

冬期の性能水準の提案(住宅シナリオと外皮性能水準:G1・G2・G3)

HEAT20が提案する住宅外皮水準G1~G3が目指すべきものは、住宅省エネ基準のような外皮平均熱貫流率UA値を満たすことではなく、地域区分毎に規定した下記の4つの「住宅シナリオ」を満たすことにあります。外皮平均熱貫流率UA値を満たすことは、あくまでその目安にすぎません。「住宅シナリオ」は、室温(NEB)、エネルギー(EB)、それぞれに二つの指標で説明しています。

※ラベル発行は終了し、「住宅システム認証」に移行しました。

NEB:室温とG1~G3

  1. ① 冬期最低室温(OT)・3%タイル値(表1)

    ・HEAT20では、G1は最低室温をおおむね10℃に保つことにしていますが、これは非暖房室の表面結露の防止、すなわち住まいの健康を主目的にしているものです。G2は1・2地域を除けばおおむね13℃、G3はおおむね15℃以上を確保することとしており、これらは室内の温度むらを小さくし、住まい手の暮らしやすさの向上や温度ストレスを考え設定しています。

  2. ② 暖房室温(OT) 15℃未満の面積比割合(表1)

    ・この指標は、単純に住宅内のどこかで15℃未満となる時間の割合を示すものではなく、住宅内部で15℃未満となる時間・面積が全体のどれくらいあるのかを示したものです。実際の住宅においては、時間のみならず空間の温度むらも考慮して検討することが好ましいという意図から、HEAT20独自の指標で説明しています。

  1.2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
居室連続暖房 LDK平日連続暖房、他は部分間歇

部分間歇暖房

冬期最低室温(OT)
(3%タイル値)

平成28年 概ね10℃を下回らない 概ね8℃を下回らない
G1 概ね13℃を下回らない 概ね10℃を下回らない
G2 概ね15℃を下回らない 概ね13℃を下回らない
G3 概ね16℃を下回らない 概ね15℃を下回らない 概ね16℃を
下回らない
15℃未満の割合(面積比による按分) 平成28年 4%程度 25%程度 約30%程度
G1 3%程度 15%程度 約20%程度 15%程度
G2 2%程度 8%程度 約15%程度 10%程度
G3 2%未満 5%程度 2%未満
表1 戸建住宅G1〜G3の住宅シナリオ・NEB

EB:省エネルギーとG1~G3

  1. ③ 平成28年省エネ基準からの暖房負荷削減率(表2)

    ・HEAT20では、省エネルギー基準の住宅に対して、どの程度の削減効果がありそうかの目安を「平成28年基準からの暖房負荷削減率」として示しています。

  2. ④ 平成28年省エネ基準における間歇暖房時の暖房負荷に対する全館連続暖房としたときの暖房負荷削減率(表2)

    ・全館連続暖房は、確実に室温を維持できますが、一般に高価で計画性が必要です。これは、その導入の判断を検討するための指標です。「〇〇%増加」であれば、省エネルギーにはならないので、導入は慎重になるべきですし、「〇〇%削減」であれば、イニシャルコストに納得できれば積極的に進めていくべきです。

  1.2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
居室連続暖房 LDK平日連続暖房、他は部分間歇

部分間歇暖房

平成28年基準からの削減率

G1 約20%削減 約30%削減 約35%削減 約45%削減 約40%削減
G2 約35%削減 約40%削減 約50%削減 約60%削減 約55%削減
G3 約55%削減 約60%削減 約70%削減 約80%削減 約75%削減
全館連続暖房時の暖房負荷増減率
(対平成28年基準居室のみ暖房)
G1 約10%削減 約5%増加 約35%増加 約15%増加 約50%増加
G2 約25%削減 約20%削減 平成28年レベルと概ね同等のエネルギーで全館連続暖房が可能
G3 約50%削減 約45%削減 約40%削減 約55%削減 約40%削減
表2 戸建住宅G1〜G3の住宅シナリオ・EB

参考:各地域区分の代表都市における外皮性能水準G1・G2・G3を満たすUA

・「住宅シナリオ」を、各地域区分の代表都市で実現するための外皮平均熱貫流率UA値が表3です。
代表都市以外での外皮平均熱貫流率UA値は、別途地域補正する必要があり。これがHEAT20であくまで参考として示しているに過ぎないUA値と、外皮性能の基準値をUA値等とする住宅省エネ基準、住宅性能表示制度「断熱等性能等級4~7」、ZEH基準などと根本的に異なる点です。

地域の区分 1・2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
代表都市 札幌 盛岡 松本 宇都宮 東京 鹿児島
外皮性能水準別
外皮平均熱貫流率UA>
[W/(m2・K)]
平成28年基準 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
G1水準 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
G2水準 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46
G3水準 0.20 0.20 0.23 0.23 0.26 0.26
表3 地域別の代表都市と外皮平均熱貫流率


夏期・中間期の性能水準の提案(G-A・G-B)

性能水準提案の目的(2025年7月提案)

近年の気候変動の影響は暖冬化のほか、夏期・中間期にも顕著に表れており、住宅外皮の高断熱化も相まって日射遮蔽などが適切に行われていない住宅では、冷房期間と冷房負荷の大幅な増加が懸念されます。HEAT20ではこれらの問題に対して検討を行い、2025年7月、冬期を対象に外皮が目指すべき性能水準(G1・G2・G3)に加え、新たに、夏期・中間期に関して建築力(日射遮蔽、外気冷房)で対応すべき2つの性能水準(G-A・G-B)を提案することにしました。
提案する2つの性能水準の考え方ですが、G-B水準(40%削減)は、「平成28年省エネ基準の部分間欠冷房負荷(顕熱)とほぼ同等で全館連続冷房が可能」なレベルといえます。 ただし、一部地域においては、それを達成するにはかなりハードな対策を必要とするため、現実性を優先してそれに準じるG-A水準(30%削減)を設定しております。
なお、1~3地域の寒冷地においてはG-A水準(30%削減)程度で、「平成28年省エネ基準の部分間欠冷房負荷(顕熱)とほぼ同等で全館連続冷房が可能」です。

EB 性能水準(G-A・G-B)

提案する2つの性能水準(G-A・G-B)は、全館連続冷房モードにおける夏期・中間期を含めた全冷房期間の冷房顕熱負荷の削減率が、平成28年省エネ基準適合住宅と比べてそれぞれ以下の削減率を満たす必要があります。どちらの場合でも、望ましくは、中間期に対しては日射遮蔽強化や外気冷房などを行うことで、「中間期の冷房負荷(「外気温<室温」で発生する中間期型の冷房顕熱負荷)が平成28年省エネ基準適合住宅の冷房負荷より増えないこと」としております。

・戸建住宅の夏期・中間期の全冷房顕熱負荷に関して(空調モード:全館連続冷房)

   性能水準 全地域共通
以下の住宅における冷房顕熱負荷(標準負荷)からの削減率
・UA値:平成28年省エネ基準
・窓の日射遮蔽:特別な措置なし
・外気冷房:なし
G-A 30%
G-B 40%


・戸建住宅の中間期型の冷房顕熱負荷に関して

「中間期型負荷(「外気温<室温」で発生する冷房顕熱負荷)が平成28年省エネ基準適合住宅の冷房負荷より増えないこと。

・冷房設備設計のための参考情報として表示

G-AまたはG-Bの水準を達成した場合の最大冷房負荷削減率を表示する。



NEB (室温)を性能水準にしない理由

冬期の性能水準(G1・G2・G3)のようにNEB(室温)を指標としなかったのは、HEAT20水準の住宅では、省エネ基準で想定される空調モード(部分間欠空調、部分連続空調など)・空調システムを前提とするものは皆無で、高性能な外皮性能を有する住宅に相応しい低負荷で簡易な空調システムを導入して暖房期・冷房期とも均一な室温形成が可能な住宅が多くなっております。これらを踏まえ、夏期・中間期の性能水準検討ではいわゆる省エネ基準で想定される古い空調モードを前提とした室温指標は相応しくないと考えました。
今後、冬期においても、このような考え方で新たな性能水準検討をすべき時代が来ており、今後のHEAT20の活動に期待いただきたいと思います。



冬期の性能水準G1・G2・G3と夏期・中間期の性能水準G-A・G-Bを両方満たす場合、どう表現するか

例えば、冬期がG2、夏期中間期がG-Bの場合 『G2-B』と表示
    冬期がG3、夏期中間期がG-Aの場合 『G3-A』と表示

両者を上記のように表現するなどして、その住宅が、特定の時期のみならず
通年に渡り一定の住宅性能、居住環境性能を確保する「建築力」を有することを示す。